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映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』 人生の選択をする時に見たい傑作

映画『 グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

GOOD WILL HUNTING 127分 アメリカ 1997年

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脚本の素晴らしさが圧倒的!

自分がこの先、どこへ向ったら良いか迷っている人に、人生の選択に必要なものは?と言うのを気付かせてくれる作品です、青春映画の傑作

当時、未だ無名な二人の若者、ベン・アフレックとマット・デイモンが脚本を書いて(しかも初めての映画化!)、『ドラッグストア・カウボーイ』で長編映画デビューしたガス・ヴァン・サント監督が映画化、主演は脚本を書いたマット・デイモン自ら演じ、助演には今は亡きロビン・ウィリアムズ(2014年没)が出ています。
ロビン・ウィリアムズはこの作品でアカデミー賞助演男優賞を受賞しています。

アメリカから良質の青春映画が生まれた、なんと言ってもベン・アフレックとマット・デイモンの脚本が素晴らしいし、ガス・ヴァン・サント監督の演出も良い、若手のマット・デイモンの演技を受け止めたロビン・ウィリアムズの演技も素晴らしかった。

物語は、貧乏な青年が肩肘を張って周りの人を拒絶して、幼なじみたちとだけつるむ、一見、どこにでも有りそうな内容で、また彼には暗い過去も存在する、これもありきたりな気がする。
しかしその主人公は天才的な数学的才能を持ち、その才能を見つけた教授も手に負えず、彼を救うべく人間味溢れた精神科医が現れる。
テーマやモチーフも優れているし、こんな物語を思いついたのも凄いと。

これだけ面白く感じられたのは、本物の若者(出演者でも有るマット・デイモンとベン・アフレック)が脚本を書いたからであろう。
彼らの才能はもちろんだが、等身大の若者がそこに描かれているからこそ、変な飾り気が無くて良い。
もちろん、主人公のウィルを過去のトラウマから解き放つ大人達の悩みも描かれている。
しかし、その話自体とは良い距離を置いて描かれている、そこにしつこく感動を求める節もない。

この脚本の凄さは伏線の張り方が素晴らしい点、そしてちゃんと回収している。
セリフが素晴らしいのも有る、だからこんなに感動で泣ける、そして笑える。

患者のマット・デイモンと医師のロビン・ウィリアムズが、過去に虐待の過去があるマット・デイモンに、常に同じ目線で「君が悪いんじゃない」と言い続けるロビン・ウィリアムズの姿が印象的、離れていた2つの心が静かに近づいていくシーンが感動的!

この映画の一番の成功は、そこに出てくる人々全ての成長を描いている点
当然、主人公のウィルを中心にしていることには間違いないが、それを取り巻く人々が見事に描き出されている。

ラストは、ウィルが旅立って行く。
オープニングに、本を読むウィルを親友が迎えに行くと大学構内の清掃の仕事へと繋がる。
これが後半「なぜ彼は敢えて大学の清掃員になったのか?」と繋がっていく。
そこで難問を解いて、幼なじみたちとリトルリーグを見るのも、後半への伏線と共に、彼の今の人生を象徴してる。
オープニングの毎朝迎えに行く日常が、後半「毎日、今日こそはお前がいなくなってるのでは?と楽しみにしている」と言うセリフに繋がっている。
ラスト近くでベン・アフレックが迎えに行くと、マット・デイモンが旅立った後でいなくなっていると言うシーンに繋がる・・・
そこには彼が何か目的を見つけた訳ではない、数学の道を捨てて彼女のもとに向かう、と言うエンディングだけど、彼自身、まだまだ若いから彼女を迎えに行ってかも、無限の可能性がそこには有る。
未来や未知の世界に一歩踏み出す勇気が大切であることを訴えかけてくる。

ウィルの彼女役のミニー・ドライヴァーは、決して美人とは言えないが、映画の中での彼女の成長ぶりと、次第に可愛らしい女性に変わっていくさまも楽しい。

アメリカの作品らしい、前向きで清々しい作品になっている。

私的『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』

テーマが有るか?共感できるか?

人生に迷った時に青年は何を思うのか、人は何を目指して生きるのか?それを実感できる。

またこの頃のアメリカの中流白人層が崩壊していることが判る。
それでも、アメリカにはまだ可能性があるということを暗示して終わる。

作り手の強い意思を感じるか?

今やハリウッドにはなくてはならない二人、マット・デイモンとベン・アフレックの実質的なデビュー作にして、脚本でその才能を開花させた作品。
二人の強い絆=友情を作品から感じ取れる。

俳優の意思や演技力が伝わるか?

俳優が作り手でもあり、マット・デイモン、ベン・アフレックが素晴らしい。
それ以上に演技と言う点で、コメディだけではなくシリアスな役に徹したロビン・ウィリアムズの演技は秀逸。

映画らしい楽しさが備わっているか?

一つの街、狭い世界から最後に旅立つシーンを観るだけで映画としての素晴らしさを感じる。

エンターテイメント性

天才が実は・・・と言う展開から青春映画として成立している。

青年の青春だけではなく、成長して心を開いていくのと同様に、カウンセリングしている側も自分の過去の妻の死を乗り越えていく姿と重層的に描いている。

2時間の枠に織り込んだ物語が素晴らしい。

演出が素晴らしいか?

ガス・ヴァン・サント監督の最高傑作の一つ、ナイーブな若者の心情を描かせるとこの監督以上の演出ができる人は少ない。

この映画の中盤(2時間の作品ちょうど1時間を経過したあたり)に、劇的な心情の変化がある。
ロビン・ウィリアムズ演じるマクガイヤ先生がウィルを診察するシーン。
それまでお互いに押し黙っていたが、ウィルが話し始めると、呼応するようにマクガイヤ先生は、亡くなった妻の思い出話をする。
その時に、カメラがマクガイヤ先生とウィルの表情を交互に写すが、イマジナリーラインを超える。
「妻が寝ていると自分のオナラで目を覚ます」と言うとウィルが心から笑い始める。

イマジナリーラインを超えることで、二人の関係が大きく変わったことを映像的に表現している素晴らしい1シーン。

脚本が素晴らしいか?

若者二人が書いた脚本が素晴らしい、テーマが一貫していて、しかもモチーフ(天才の青年と精神科医)もユニークで、しかも話が互いに傷つきながらも再生していく、2つのドラマが絡み合っている。
前半の伏線が見事に後半につながっている。

この物語の着想は、インドの天才数学者・ラマヌジャンにあるようだ。
(ラマヌジャンを描いた映画『奇蹟がくれた数式』 『グッド・ウィル・ハンティング』の基になった物語はこちら
前半で、手に負えないウィルのカウンセリングを、ランボー博士がマクガイヤ先生に、レストランで依頼をすると言うシーンがある。
そのシーンで、ウィルを表して彼の天才ぶりは「ラマヌジャン以上だ」と言う。

前半、ベン・アフレックがマット・デイモンを毎朝迎えに行くが、ラストは迎えに行ってもいない、それは彼が人生の選択をして旅立って行くことの伏線になっている。

何度も見たくなるか?

爽やかな青春映画を繊細に描いている、前向きにさせてくれて心に残るものを感じさせてくれる。
そして、なんと言っても、映画としての演出も脚本も楽しませてくれて、見る度に新しい発見のある映画。

映画『グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち』のデータ

監督■ガス・ヴァン・サント
製作■ローレンス・ベンダー
脚本■ベン・アフレック/マット・デイモン
撮影■ジャン=イヴ・エスコフィエ
コスチュームデザイン■ベアトリックス・アルーナ・パストール
美術■メリッサ・スチュワート
編集■ピエトロ・スカリア
音楽■ダニー・エルフマン
主題歌■エリオット・スミス
出演■ロビン・ウィリアムズ/マット・デイモン/ベン・アフレック/ステラン・スカルスガルド/ミニー・ドライヴァー/ケイシー・アフレック/コール・ハウザー/スコット・ウィリアム・ウィンタース

■アカデミー賞1997年
作品賞ノミネート
主演男優賞ノミネート マット・デイモン
助演男優賞授賞 ロビン・ウィリアムズ
助演女優賞ノミネート ミニー・ドライヴァー
監督賞ノミネート ガス・ヴァン・サント
脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
主題歌賞ノミネート エリオット・スミス "Miss Misery"
音楽賞(オリジナルドラマ)ノミネート ダニー・エルフマン
音楽賞(オリジナル・ミュージカル/コメディ)ノミネート ハンス・ジマー
編集賞ノミネート ピエトロ・スカリア
■ベルリン国際映画祭1998年
銀熊賞(貢献賞)授賞 マット・デイモン 脚本と演技において
■ゴールデン・グローブ1997年
作品賞(ドラマ) ノミネート
男優賞(ドラマ)ノミネート マット・デイモン
助演男優賞ノミネート ロビン・ウィリアムズ
脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
■放送映画批評家協会賞1997年
作品賞ノミネート
オリジナル脚本賞授賞 マット・デイモン/ベン・アフレック
ブレイクスルー賞授賞 マット・デイモン

【解説】
 深い心の傷を負った天才青年と、同じく失意の中にいた精神分析医がお互いにあらたな旅立ちを自覚して成長してゆく姿を描く感動のヒューマン・ドラマ。
 ボストンに住む青年ウィルは、幼い頃から天才ゆえに周囲から孤立していた。だが、彼の才能に気付いた数学教授のランボーは、ウィルに精神分析医のショーンを紹介する。ウィルはショーンにしだいに心を開いてゆくが、彼の才能に気付いた政府機関や大企業が接近してくる。映画データベース - allcinema より)

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