映画『風に立つライオン』
139分 日本 2015年
遥か遠いケニアの大地――
愛する人たちへ捧ぐ「命の讃歌」
自分をはげますことで出来ること
「頑張れって言うのは人に言う言葉じゃないよ、あれは自分に向かって言ってるんだ」
大沢たかおさん演じる主人公が、アフリカの大地の地平線に向かって「ガンバレ~」と叫びます。
それを見ていた女性(看護婦)に主人公が言ったセリフです。
さだまさしさんが1987年に発表した同曲をモチーフに、俳優・大沢たかおさんがさださんに熱望して小説化、そして映画化された作品。
監督は三池崇史、共演に石原さとみ、真木よう子。
1987年にアフリカ・ケニアのに渡った一人の青年医師が見た想像を絶するような過酷な現実、それにどう向かっていったかを描いています。
実はこの作品には非常に興味が有りました、それは最貧国の子供達を描いているからです。
それを稀代のエンターティナー・三池崇史監督が描いたことで、不安も有り、そして期待もして見ました。
この作品、2時間30分近い長さの作品なのですが、個人的にはちょっと長過ぎる。
おそらく、色々と詰め込み過ぎてるんだと思います、確かに僕が物語を考えたとしても、日本とケニアを対比して描きたい、と言う気持ちになります。
ただ、映画にする時は日本のパートはバッサリ切っても良かったのではないでしょうか?(日本のパートも出来は良いし、地方医療の大切さを描いているのですが)
更に言うと、本筋のケニア・ロケ、やっぱり日本映画が海外ロケをすると、言葉に表現しづらい違和感を感じるのです。
言葉の問題で現地の俳優さんを上手く演技指導出来ないとか、ハードルは高いのかもしれません。
結果、どうしても主人公演じる大沢たかおに頼った演出にならざる得ない。
その一方で、この難しい題材を映画化したことに、キャスト・スタッフに敬意を払いたい。
特に三池崇史監督は、どちらかと言うと職人監督さんで『グローズZERO』や『悪の教典』等のなんでも撮れてしまう監督が、敢えて社会的なテーマに切り込んだ作品でした。
そして地球の反対側で生命の大切さを痛感して生き抜いた日本人を描いた、このテーマを映画にした、これ程素晴らしい事はないと思う。
主人公が、この過酷な現実の中に見つけたのは、子供と言う希望だろう、その希望のために志を抱いて行動をした。
それを伝えられる手段としての映画の素晴らしさを感じるのです。
志を貫いた日本人の姿を感動的に描き切った作品、最後は涙があふれてくる「ガンバレ~!ガンバレ~!」っと。
そして改めて子供に必要なものは「愛情」と「教育」であることを教えてくれる。
四半世紀前からこの現状は、今も変わらないと言う事を、今の日本の若者にも知って欲しい、そして是非、観て欲しい作品。
そして、自分へのエール「ガンバレ~!」
さだまさしさんの歌とこの小説には、元々、モデルになった医師がいます。
柴田紘一郎先生という人です、JICAの専門家になります。
下の映像はJICAとは関係有りませんが、映画の背景に何が有るかを感じ取ってもらえると思います。
「何もかもは」はできなくても「何か」はきっとできる。
「何か」をする自分も励ましたいと思う。
少し長い映像ですが、これが世界の現実です。
私的『風に立つライオン』
① テーマが有るか?共感できるか?
この世の中にまだ最貧国があり、日本は先進国であると言う事実、その中で何ができるのか?ということを考えるのは大切なことではないでしょうか?
それを気付かせてくれます。
日本の地域医療と言うテーマが対比するものなのか?と言う点で少し疑問点は残る。
② 作り手の強い意思を感じるか?
さだまさしさんの歌を聞いて映画にしたい、映像にしたいと言う想いをもった俳優の大沢たかおさん。
そしてそれを演出した三池崇史監督、それぞれの想いが詰まった作品に感じます。
③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?
大沢たかおさんや日本人の俳優さんたちは素晴らしい。
やはり残念なのは、日本の映画が海外に行くと、海外の俳優(現地の人たち)の演技に違和感を感じてしまう。
④ 映画らしい楽しさが備わっているか?
日本映画には珍しいスケールの大きな作品、アフリカの大地が美しい。
ただ現実は厳しいということ、映画館で見ることで迫力を感じることもできる作品になっている。
⑤ エンターテイメント性
最貧国で扱われる子供たちと、日本地域医療と言う2つのテーマを追ったことによって、エンターテイメントと言う点では、ちょっとブレた感じが有り、どうしても日本のパートが重く感じられてしまったのが残念。
⑥ 演出が素晴らしいか?
海外作品の壁を感じてしまう。
果たして、これは乗り越えられる壁なのか、ちょっと思いつかない
けれども。
スタッフの素晴らしい仕事は感じられるだけに惜しい。
⑦ 脚本が素晴らしいか?
日本のパートの扱いが難しい、離れ離れになる主人公とその恋人の関係や、主人公がアフリカで出会う看護婦との関係など、詰め込み過ぎの部分が感じられる。
⑧何度も見たくなるか?
これは作品の出来と言う話になってしまうが、きっとアフリカのパートだけで上手くまとめることが出来れば、一つのテーマで作られた映画となったと思う。
映画『風に立つライオン』のデータ
監督■三池崇史
企画■大沢たかお
エグゼクティブプロデューサー■門屋大輔
プロデューサー■藤村直人/坂美佐子/前田茂司
ゼネラルプロデューサー■奥田誠治
原作■さだまさし
脚本■斉藤ひろし
撮影■北信康
美術■林田裕至
編集■山下健治
音響効果■柴崎憲治
音楽■遠藤浩二
主題歌■さだまさし
VFXスーパーバイザー■太田垣香織
スタイリスト■前田勇弥
照明■渡部嘉
装飾■坂本朗
録音■中村淳
助監督■原田健太郎/倉橋龍介
出演■大沢たかお/石原さとみ/真木よう子/萩原聖人/鈴木亮/石橋蓮司
【解説】
アフリカで医療活動に従事した実在の日本人医師にインスパイアされたさだまさしが87年に発表した同名曲をモチーフに、さだ自らが2013年に書き下ろした小説を、大沢たかお主演で映画化したヒューマン・ドラマ。
共演に石原さとみ、真木よう子。
監督は「藁の楯 わらのたて」「神さまの言うとおり」の三池崇史。
1987年、大学病院に勤務する島田航一郎はケニアの研究施設に派遣されることが決まり、恋人の貴子を日本に残し、ケニアへと旅立った。
現地で研究と臨床に明け暮れ、充実した日々を送っていた航一郎だったが、その後、国境近くの赤十字病院からの派遣要請を受ける。
航一郎は、想像を絶する過酷な状況に戸惑いながらも、同病院で出会った日本人看護師・草野和歌子と力を合わせ、負傷者の手当に当たる。ある日、そんな航一郎の前に、一人の少年兵ンドゥングが担ぎ込まれてくるが…。(映画データベース –allcinema より)