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映画『甘い生活』 イタリア人のローマ、そしてイタリア人そのものを描いた傑作

映画『甘い生活』 LA DOLCE VITA

甘い生活

フェリーニの映画は楽しい、でも苦手

この作品もフェリーニらしい作品、とにかくフェリーニの映画の本質は、“サーカス”なので有る!そしてパレード...

この作品には、印象的なシーンが多い、オープニングのキリスト像が、空をヘリコプターに宙吊りにされて運ばれていくシーン、アニタ・エクバーグ演じる女優が、レストラン(?)でそこにいる人々を連れて踊り回るシーン、またその女優が酔ってトレビの泉に入るシーン、主人公マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)が、父親を連れて行ったクラブで芸人のラッパを聞くシーン、マリアが現れたと言い人々が集まるシーン等々。
それは常に“サーカス”に人が集い、喜び、悲しむシーン。

この作品は、公開当時は大きな反響を持って迎えられたらしい。
フランスではヌーヴェルバーグが始まった頃、反体制的であり反宗教的で有ること。
それらが、反響の元で有るようだ。(フェリーニ本人は、反体制でも反宗教でも無く、形骸化したものへの反発心が有るだけだと思うのだが)
でも、今、これを観ても、それ程、おぞましく感じることは出来ない。
時代は変わってしまったのだ。

甘い生活、退廃的な生活で有り、目的も無く無軌道な生活。
しかし、そこには文明がもたらした甘美な世界が有る。
主人公マルチェロの友人スタイナーが、子供2人を道連れに自殺してしまうところは、この世の救済にも絶望感が感じられる。
ラストでは、唯一の望みで有る少女バロラの存在が有るが、結局、彼女とはどこで出会ったかも判らず、元の仲間の所へ戻ってしまうマルチェロ。

当時、その世界を見事に描いてみせたフェリーニの冷徹さ、その表現力の素晴らしさは伝わるが、残念ながら、ここの描かれたテーマ自体が古くなってしまったと思う。
今は、もっと退廃的な世の中になってしまったと思えるのだ。

主演のマストロヤンニが若い!彼はこの作品で見事な俳優になったと聞く。
確かにイタリア人の良さと嫌らしさを見事に表現していた。

またフェリーニの女性の趣味もアニタ・エクバーグを通して見ることが出来る。
そう、グラマラスで健康的な女性、と同時にアヌーク・エーメのような女性の描き方も上手い。

ニーノ・ロータの音楽も軽妙で、この作品をより際立たせる。
美術を担当したゲラルディのローマの繁華街“ヴェネト通り”は雰囲気を伝える。

フェリーニの独特な甘美な世界、見事な表現力を持った作品で有ると同時に、その時代を描く事により、時代の移り変わりに取り残されてしまった傑作とも言える。

Reviewed in 05.1999

甘い生活

映画『甘い生活』のデータ

LA DOLCE VITA
LA DOUCEUR DO VIVRE [仏] 185分 1959年 イタリア=フランス
監督■フェデリコ・フェリーニ
製作■ジュゼッペ・アマート/アンジェロ・リッツォーリ
原案■フェデリコ・フェリーニ
脚本■フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ
撮影■オテッロ・マルテッリ
音楽■ニーノ・ロータ
美術■ピエロ・ゲラルディ
編集■レオ・カトッツォ
製作会社■リアマ・フィルム/パテ・コンソルティウム・シネマ
備考■白黒
日本公開■1960年
出演■マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/ワルテル・サンテッソ/レックス・バーカー/アラン・キュニー/アンニバーレ・ニンキ/ポリドール/バーバラ・スティール/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ/イヴォンヌ・フルノー/マガリ・ノエル/ヴァレリア・チァンゴッティーニ/アラン・ディジョン

1961年アカデミー賞
監督賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ
脚本賞ノミネート フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・ロンディ

1960年カンヌ国際映画祭
パルム・ドール授賞 フェデリコ・フェリーニ

1961年N.Y.批評家協会賞
外国映画賞授賞

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 強烈な通俗性の中に、豊潤な映像美学を開花させ、一つの大都市をこれだけ魅力的に捉えた作品は他にない。
 この映画の主役は間違いなくローマそのものだ。
無論、M・マストロヤンニという最適の語り部を用意してはいるが。

 作家志望の夢破れて、今はしがないゴシップ記者のマルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)は豪華なナイトクラブで富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)と出会い、安ホテルで一夜を明かす。
 ハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を取材すれば、野外で狂騒し、トレビの泉で戯れる。
 乱痴気と頽廃に支配された街ローマ。
 同棲中のエンマ(イヴォンヌ・フルノー)は彼の言動を嘆く。
 二人で訪れた友人スタイナー(アラン・キュニー)一家の知的で落ち着いた暮らしぶりを羨むマルチェロだが、彼らも子連れの無理心中で突如死に、残るは絶望の実感のみ。
 いよいよ狂乱の生活に没入するマルチェロは海に近い別荘で仲間と淫らに遊び耽る。
 彼らが享楽に疲れ果てた体を海風にさらす朝、マルチェロは波打ち際に打ち上げられた怪魚の、悪臭を放って腐り果てるさまを凝視した。
 彼方で顔見知りの可憐な少女バロラ(ヴァレリア・チァンゴッティーニ)が声をかけるが、波音に消されて聞こえない。かくて純粋な青春の時は終わったのか・・・。

 素晴らしいラストシーンを持った、フェリーニにしか描けない都市のデカダンスが弾ける。N・ロータの音楽も多様な変奏を聴かせ、映画と完全に溶け合って見事。 <allcinema

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