全体 映画に感動する! 映画特集 雑感

2016年の新作映画を振り返ってみる!

アニメ大国・日本を改めて実感

明けましておめでとうございます。

2016年が終了して、2017年となりました。
そこで2016年の映画を振り返りたいと思っています。

日米のアカデミー賞キネマ旬報映画秘宝のベスト10が発表されるのはもう少し先。
当然、私は新作は50本ほどしか見れないから、漏れている面白い作品が多いと思うけど、昨年見た新作の好きなもの10本をまとめておこうと思う。

2016年はポスト・ジブリのようなところが有って、国民的アニメは誰が作るか?その中で夏以降に素晴らしいアニメが3本も登場した。

私より年上の世代は「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」と言った手塚治虫のアニメなのかもしれないが、自分は約40年前に「宇宙戦艦ヤマト」に出会い、「機動戦士ガンダム」に出会った世代。
映画は『スター・ウォーズ』と共に『銀河鉄道999』を並んで初日に見に行った世代とも言える。
その頃から宮崎駿監督は活躍していた訳だから、数十年ぶりの世代交代の年とも言えた。

日本映画がヒットする訳

興行収入2,000億円市場の奪い合い

数年前に私が初めて映画をプロデュースした頃は、確か日本で劇場公開される作品数は800本を超えていた。
2016年は1,000本を超えると言う話も聞いている(2013年から1,000本超え)が、興行収入自体はこの十数年とか、2,000億円からほとんど変わっていない、景気に影響されないエンターテイメントとも言える、但し、人口減少がこれから急速に進む中で、どうなるかは心配ではある。

さてさて、日本映画と外国映画の公開される本数の比率だが、1950~1960年代は日本映画も全盛期で、現在の5倍以上の人が映画館で映画を見ていた。
1970年以降は、テレビの影響で急激に観客動員数が落ち込み、一気に1/5になっている。
逆にそれ以降は、ほとんど変わっていない。
その中で、1980年以降は外国映画の方が公開される本数が多く、1990年頃は実に7割近くが外国映画が劇場で上映されると言う時代だった。

2006年に再び、日本映画の公開本数が逆転して、現在は半々で少し日本映画が多いくらいと言う感じ。
本数が増えているのは、映画が低予算でも撮れる環境ができてきたこと、もう一つはシネコンの増加にある。
スクリーン数は1960年頃は7,000館(この頃は館数)有ったが、一気に減って1993年には1,700館まで激減。
2000年からスクリーン数での計算になるが、増加傾向にあり現在は約3,400スクリーンとなっている。
シネコンと通常映画館の比率は、9割弱がシネコンのスクリーンとなっている。

シネコンの特徴

シネコンは複合レクリエーション施設の一部として建てられることも多く、ファミリー層への訴求が高くなる。
と同時に、スクリーン数が多いために、たくさんの映画が同時に上映が可能となる。
これは上映本数が増えることにもつながるが、一方でヒットしている作品は長い期間上映されて、ヒットしない作品に関しては、上映期間が短くなり、一日の上映回数も減らされる、という傾向が顕著になる。

作品の弱肉強食が明確になる
良い映画がヒットすると言うよりも、お金をかけて宣伝した作品がヒットする傾向に拍車がかかる

日本映画の露出度

手元に日本映画と外国映画の興行収入のデータがないので、どちらがヒットしているかは不明。
2016年で言うと『君の名は。』と『シン・ゴジラ』の2本があるので日本映画の方が稼いでいると思う。
2014年の『アナ雪』の254億円、2015年は『ジュラシック・ワールド』『ベイマックス』が100億円弱の大ヒット作品があるので、外国映画の方が上回っている気もする。

ただ1990年代の外国映画一辺倒の時代を知る者ととしては、今の日本映画がこれだけヒットするのは何故か?とある人に言われたことが腑に落ちた。

日本の映画は製作委員会方式が定着して、大作にはテレビ局が製作委員会に入っているケースが多く、番宣に俳優が動員されていることが、映画のヒットと強く紐付いている。
映画公開前になると、バラエティ番組に俳優がやたら出演するのはこのため、日本映画の露出が極端に多くなるため、数が多いと人は選択ができなくなるため必然的に露出度の高いものを選ぶ傾向になる。
少し前だと、TVシリーズの映画化が多かったのもこのため。

ただ今年は、『シン・ゴジラ』は逆に宣伝を抑えめにしたと言う話もあり、『君の名は。』に至っては、これ程までのヒットは予想しておらず、新海誠監督もヲタクに知名度が高いだけで、公開後の露出に比べると非常に少なかった。
このあたりは例年とは違う傾向だったように思う。

原作ものとシリーズもの

日本はとにかく原作もの映画が多い、大ヒット小説・マンガが原作と言うものがほとんど。
以前はTVシリーズの映画化だったが、現在は原作ものの傾向が強くなっている。

一方、外国映画の中心がハリウッド映画だけど、シリーズものが多い、ただハリウッドはメジャー系の大資本がインディペンデント系の小さなプロダクションに資金を出して作品を作る傾向が有るらしい、アメリカのアカデミー賞で作品賞にノミネートされる小さな作品はこの手のものらしい。

2016年 私の好きな10本

そろそろ私の好きな10本の紹介、映画館に映画を見に行く時点で、映画の取捨選択をしている。
世間的(または業界的)に評判の良いもの、好きな監督、好きな俳優というのも選ぶ基準になるから、だいたい見に行くものに外れは少ない。

今年は、タランティーノやアルモドバルを見逃したり、怖い映画とアイドル映画は見逃したものが多い。
怖い映画に関しては、若い頃はよく見てたけど、最近は怖いのであまり見ていない、今年見たのは『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』と『クリーピー 偽りの隣人』くらいかな。

第10位『淵に立つ』

2016年10月8日公開
監督・オリジナル脚本■深田晃司
出演■浅野忠信/筒井真理子/古舘寛治/大賀

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第69回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」部門審査員賞受賞した作品。
カンヌも特殊なところなので、北野武、黒沢清、河瀨直美といった独特の味わいのある作品が賞をとる傾向が強い。

この作品はオリジナル脚本で、しかも非常に個性的、欧米人から見ると不思議な日本人をロボットのような描き方をしながら、人間の内部に持っている狂気を描いている

第9位『海よりもまだ深く』

2016年5月21日公開
監督・原案・脚本■是枝裕和
出演■阿部寛/真木よう子/小林聡美/リリー・フランキー

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「なりたいものに、まだなれてない」40代のさえない主人公の一言が染みる。
人生を半分過ぎで、自分のやりたいことがやれてる人は少ない、そしてこの先自分ができることの限界も見えている、人は独りでは行きていけない、共存するから可能性が続くんだと思わせてくれる作品。

第8位『怒り』

2016年9月17日公開
監督・脚本■李相日
原作■吉田修一
企画プロデューサー■川村元気

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豪華な俳優たちの競演が見事!
個人的には「人を信じることの怖さを知った2016年」であり「人を信じることの大切さを知った2016年」を象徴するようなテーマの作品。

この作品の感想は
映画『怒り』  レイプとゲイのラブ・シーンだけではない!
からどうぞ。

第7位『スポットライト 世紀のスクープ』

2016年4月15日公開
監督■トム・マッカーシー
脚本■トム・マッカーシー/ジョシュ・シンガー(実話を基にした話)
出演■マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス

第88回米アカデミー賞作品賞・脚本賞受賞作

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「教会の闇を暴く」と言うと簡単なようだけど、日本人には想像できないかくらい困難なことに立ち向かった新聞記者たちの話。

信念をもって何かに立ち向かう人々の姿は美しい!そして感動的。
ラストの事実には、心が震える!

番外その1『海賊とよばれた男』

2016年12月10日公開
監督・脚本■山崎貴
原作■百田尚樹
出演■岡田准一/吉岡秀隆/染谷将太/鈴木亮平/綾瀬はるか/堤真一/國村隼/小林薫/近藤正臣

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「日本人がおるかぎり、この国は再び立ち上がる」「いっちょやってやろうやないか」の精神で戦後日本の復興を支えた男のアイツ情熱の物語、VFXも流石、山崎貴監督。

何故番外にしたか、それは『風立ちぬ』や『この世界の片隅に』にあって、この作品にないものを気がつかせてくれた作品だから。

この作品の感想は
映画『海賊とよばれた男』  モデルは出光佐三、ビジネスの成功の秘訣
からどうぞ

第6位『世界から猫が消えたなら』

2016年5月14日公開
監督■永井聡(『ジャッジ!』が良かった)
原作■川村元気
脚本■岡惠和
出演■佐藤健/宮崎あおい/濱田岳/奥田瑛二/原田美枝子

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余命宣告をされた若者が、それを納得するまでの心の動きを描いた感動作。
函館の街を背景に美しい映像が、更に残酷に感じさせます。
自分が生きていることに意味がある」と感じれる作品です。

この作品の感想は
映画『世界から猫が消えたなら』 猫が死ぬ話ではありません、僕が死にます
からどうぞ。

第5位『聲の形』

2016年9月17日
監督■山田尚子
アニメーション制作■京都アニメーション
原作■大今良時 (講談社コミックス刊)
脚本■吉田玲子
キャラクターデザイン■西屋太志
声優■入野自由/早見沙織/悠木碧/小野賢章/金子有希/石川由依/潘めぐみ

公式サイトはこちら

自分の素直な気持ち=声はどうやったら伝わるんだろうか?
いじめの問題を正面から描いたマンガが原作、原作も面白いが、アニメも上手くまとめられている。

この作品の感想は
映画『聲の形』 ストレートに伝わらない心の声
からどうぞ!

第4位『 君の名は。』

2016年8月26日公開
監督・脚本■新海誠
作画監督■安藤雅司
キャラクターデザイン■田中将賀
音楽■RADWIMPS
声優■神木隆之介/上白石萌音/長澤まさみ/市原悦子

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2016年度の大ヒット作品、興行収入が200億円を越えようとしている怪物作品。
個人的にも本当に好きな作品で、これが1位で良いのでは?と思えるエンターテイメント性の高さ。

楽しさを詰め込んだ作品で何度でも見たくなる楽しさ!

この作品の感想は
映画『君の名は。』  オッサンでも感動できる青春映画の傑作登場!
からどうぞ!
『君の名は。』  聖地巡礼 東京編計画書
はこちらです~

番外その2『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

2016年12月17日公開
監督■三木孝浩
原作■七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社)
脚本■吉田智子
音楽■松谷卓
出演■福士蒼汰/小松菜奈/山田裕貴/清原果耶/東出昌大/大鷹明良/宮崎美子

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デート映画でも、大好きな作品、これもアリかと思う、スレ違いの恋が切ない。
ファンタジーとして楽しめばイイと思う。

この作品の感想は
映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』  今、最高のデート映画、泣ける!
からどうぞ

第3位『この世界の片隅に』

2016年11月12日公開
監督■片渕須直
アニメーション制作■MAPPA
企画■丸山正雄
プロデューサー■真木太郎
原作■こうの史代
脚本■片渕須直
キャラクターデザイン■松原秀典
作画監督■松原秀典
音楽■コトリンゴ
主題歌■コトリンゴ  『悲しくてやりきれない』
声優■のん/細谷佳正/稲葉菜月/尾身美詞/小野大輔/潘めぐみ

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かつて戦争をしていた国、日常の中に戦争がある風景を映し出す、日本人が忘れてはいけないものがそこに有った。
のん(能年玲奈)の声が素晴らしい。

映画の枠を超えて、後世に伝えていきたい作品。

この作品の感想は
映画『この世界の片隅に』  能年玲奈が「のん」に変わる時
からどうぞ

第2位『ルーム』

2016年4月8日公開
監督■レニー・アブラハムソン
製作国■アイルランド/カナダ
監督■レニー・アブラハムソン
原作■エマ・ドナヒュー 『部屋』(講談社刊)
出演■ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョーン・アレン/ショーン・ブリジャース/ウィリアム・H・メイシー

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2016年の米アカデミー賞主演女優賞受賞作品(作品賞、監督賞、脚色賞ノミネート)で、カナダの小さな作品(撮影がカナダ・トロント)が、ハリウッドの大作を向こうに回してこれだけの評価を得たという作品。

まず脚本が起承転結と見事に展開していくことと、前半と後半でガラッと話の内容が変わっていく、またその転換点の演出も映像的に非常に美しく、完成度の高さも素晴らしい。

欧米が抱える「誘拐」というテーマを新しい視点から描いている点も良かった。

第1位『 永い言い訳』

2016年10月14日公開
原作・脚本・監督■西川美和
撮影■山崎裕
出演■本木雅弘/竹原ピストル/藤田健心/白鳥玉季/堀内敬子/池松壮亮/黒木華/山田真歩/深津絵里

公式サイトはこちら

人が壊れることで表層に出てくる人の本質を表現することから、壊れた人間関係がどうなっていくか?
と一歩踏み込んで描いてみせた、と言う点で、西川美和監督が一歩先に進んだ気がした。
また、その落としどころが腑に落ちた、それが1位の理由かと。

演出など作品の完成度は流石、本木雅弘の演技も一段と良かった。

この作品の感想は
映画『永い言い訳』  妻が死んでも泣けないアラフィフ男の本音と建前
からどうぞ

2016年のまとめの最後に

2016年は『君の名は。』が興行収入200億円という邦画としては、ジブリ以外では初めての大台。
共にアニメ3作品を外すことができなかった。
『君の名は。』と『シン・ゴジラ』は、セカイ系という言葉を広めた東浩紀氏が「ヲタクの時代は終わった」と言わせた作品、どちらも確かになるほど、と。
ようはガイナックス系(エヴァのこと)とセカイ系のヲタクをメジャーがやってしまったから、この先にあるものは?と言う感じ。
と言う意味でも『君の名は。』はやり尽くした、何でも詰め込んだと言う意味でも、1位でも良かった。

でも一方で、やっぱり「映画は自分の鏡」という点では、今の自分に一番近い・身近な作品は『永い言い訳』や『海よりもまだ深く』であり、やはり実写映画の完成度という点でも評価が高かった。

外国映画に関しては、新作を見る機会が単に少なかっただけのような気もするが、2本しかしれなかった外国映画は完成度はもちろん、映画と伝えるべきものをハッキリ持っている点に関しては外せない作品だった。
クリント・イーストウッド監督は相変わらず質が高いものの過去の作品を超えておらず、大好きなスピルバーグ監督は平均点とそれ以下の2作品ということで、今回は選ばなかった。

個人的には2年以上、映画制作から離れていることも有って、日本の若手監督の動向が気になるが、どうも自分が思っている方向とは違う方を向いているような気がする。
西川・是枝の師弟コンビはもちろん、深田晃司監督のオリジナル作品が、大手ではないところで制作されながら、物凄い完成度と内容の深さを感じさせてくれた。
原作ものや大手メジャーが作るものが良くないとも思っていないが、作品の内容とは関係ないところで評価がされているところもある気がした2016年だった。

さて、2017年もスタートして、続々と新しい映画の話も耳に入ってきている、どんどん良い作品が公開されていくのが、また楽しみでもある。

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