映画『何者』
恋愛、友情、就活、裏切り。
これが僕たちのリアル。
イントロダクション
原作は映画『桐島、部活やめるってよ』で大ヒットを飛ばし、平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した朝井リョウのベストセラー「何者」(新潮社)。
就活活動を通して自分が「何者か?」を模索する5人の大学生たちの青春物語。
お互いを励まし合いながらも、SNSで表と裏の顔を使い分ける今時の彼ら、“痛いほど圧倒的な現代のリアル”が詰まった問題作を映画化。
監督・脚本は、演劇界の若き鬼才・三浦大輔。
演劇ユニット「ポツドール」主宰者として数々の話題作を上演している、映画では『愛の渦』が近年話題になっている。
主人公・拓人を演じるのは人気絶頂の実力派の若手・佐藤健。
競演にも、今、旬の若手俳優達、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之といった実力派が並ぶ。
これから就活を始める人、就職で苦労した人、必見の就活青春エンターテイメント!
今の就職戦線とSNSは切り離せない
2chとかを普通に使っている自分にとっては「なりすまし」や「ネカマ」とか「裏アカウント」とかは普通なので、結構“あるある”感の方が大きくって、2chでの潰し合いを知ってるから、Twitterでの裏の顔も楽しく見れた。
それにしても、カッコイイよなぁ~映画自体が、作りが洗練されている。。
これから就職を控える大学生・若者は絶対見ておいた方が面白いし、就職活動を終えたばかりの新人サラリーマンとかは、やっぱり「あるある」だと思う。
実際、オジサン(私)の周りを埋め尽くした若者からは上映後「ああいう奴、いるよなぁ~」「ウザいな、二階堂ふみ」とか声が聞こえてきた。
そして、中田ヤスタカ×米津玄師の音楽が最高な訳だし。
そしてここで語られるのが、SNSの怖さ、就職によって自分が「何者」かを試される、そしてふるいにかけられていく残酷な体験をする。
本音と建前、お前らゾンビだろ~と言うくらいSNSにはびこっている、こんなヤツらいるよなぁ~意識高い系からそれを裏で悪口を書きまくるヤツと、どんどん怖くなってくる。
若者にとっては「こんなヤツ周りにいたよ」とか、就職ってこんなもんなんだ~疑似体験できる楽しさ?怖さがある。
通り過ぎてきた、オジサンを含めた上の世代は、自分の子供たちがこういうところに突っ込んで行く、という大変さが本当に判る、本音を言わない建前のSNS社会でどうやって上手く生きていくか。
まっ、facebookも、気持ち悪いくらいポジティブなことしか書かないのってどうなの?あっ!(笑)
就職活動で苦労した人間には”共感ハンパねぇ~"楽しいエンターテイメント。
私的『何者』ネタバレあり
① テーマが有るか?共感できるか?
当たり前だけど、大人になる人のほとんどの人が就職活動をする。
そこで否応なく自分が「何者」かを相手に伝える必要がある、それは本音が伝わる場合もあれば、建前で乗り切れるヤツもいる。
就職って意外と運だったりするし、甘い青春の終わりの始まりだったりと。
② 作り手の強い意思を感じるか?
原作者の朝井リョウがその世代そのものと言うのもあるんだろうけど、『桐島、部活やめるってよ』同様になんかイタイところがそこかしこに出てくる。
「学生時代にはこんなことに打ち込んでいました!」「友達が沢山いて人脈作りをしてきました!」「慈善活動でこんなに充実してました!」と言ったアピール。
もう就活から社会の仕組みの競争という歯車に組み込まれていく姿が見事に表現されている。
③ 俳優の意思や演技力が伝わるか?
佐藤健演じる主人公の冷静に分析しながら裏の顔を・・・と言うのは怖い反面、なんか一番あるなぁ~と。
それにしても、みんながハマっていて。
一番好きなことやって、就職に無関心なヤツ=菅田将暉演じるバンドマンが一番最初に内定もらったりと。
女性二人が対照的で面白い、二階堂ふみは真面目て意識高い系だけど、チラッと胸元を見せながらも、彼氏を紹介してしまう嫌な女・・・
④ 映画らしい楽しさが備わっているか?
顔が出てこない演劇に熱中している主人公の親友が出てくる、あらゆるところで舞台のシーンが出て来る。
後半の物語の進行と、舞台が混じり合うところが面白いし「まさか!?」と思わせるところがある。
それと、就職を「横並び」で表現するところが度々出てきて、そうそう学生時代まではなんでも横並びになったなぁ~と思ったりして。
⑤ エンターテインメント性
ネタバレ!
で、書くと、この映画は実は映画の予告が「騙し絵」になっている。
ほぼ、重要なシーンが予告に流れてるのに、予告を見ると絶対見た人は誤解する。
でも、それとは違う方向性に走っていく面白さは有った、それと上手に伏線が張っていて最後一気にまきとっているところが鮮やか。
⑥ 演出が素晴らしいか?
ラストのどんでん返しに向かって、結構、演出の罠がある、まぁ~フィクションだから許して、と言う感じで。
なんとなく、就職活動経験者(30年前だけど)には「あれ?」と感じさせる。
そのくらい上手く仕込んでいるので、これは見て騙されるか、何となく気付くか、楽しめる。
⑦ 脚本が素晴らしいか?
原作は主人公の一人称らしいけど、それが今回はそれぞれの視点で語られていくから、その点で人の表と裏がジワーっと出てきて面白い。
それと、舞台との融合がちょっと面白い雰囲気がある。
でも・・・ネタバレ・その2
どんでん返しが、てっきり「この物語は全部舞台で、舞台に熱中しているイタイやつ」と主人公・拓人が同一人物、くらいの意外性を期待していた~
人生って就職だけじゃないだろ~くらいの原作にないどんでん返しを入れても良かったのでは?と。
⑧何度も見たくなるか?
テンポが良くて、音楽と俳優の競演と言う感じでセンスが抜群、ノリの良さで見れる作品。
一方で、朝井リョウ原作と言うこともあり、今の若者、現代と言うものを意外な切り口で見せてくれる。
私の世代は、金子修介監督、織田裕二主演の『就職戦線異状なし』(1991年)が懐かしい。
映画『何者』のデータ
原作■朝井リョウ(『何者』新潮文庫刊)
監督・脚本■三浦大輔
音楽■中田ヤスタカ
主題歌■「NANIMONO(feat.米津玄師)」中田ヤスタカ(ワーナーミュージック・ジャパン)
企画・プロデュース■川村元気
出演■佐藤健/有村架純/二階堂ふみ/菅田将暉/岡田将生/山田孝之
公開日■2016年10月15日
公開情報■全国東宝系にてロードショー
【ストーリー】
就職活動の情報交換のために集まった、5人の22歳。企業に入れば特別な「何者」かになれるのか、そして自分は「何者」になりたいのか。
それぞれが疑問を抱えながら、就活に立ち向かっていた。かつて演劇サークルで脚本を書いていた、人を分析するのが得意な拓人(佐藤健)。
天真爛漫で何も考えていないようで、着実に内定に近づいていく光太郎(菅田将暉)。
光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せ続ける、実直な性格の瑞月(有村架純)。
「意識高い系」でありながら、結果が出ず不安を募らせていく理香(二階堂ふみ)。
社会の決めたルールには乗らないと宣言しながらも、焦りを隠せない隆良(岡田将生)。
そんな5人を先輩として見守る、大学院生のサワ先輩(山田孝之)。力を合わせて就活を進める中、5人はそれぞれの思いや悩みをツイートするが、それはあくまで表の顔。内定が決まらない中、お互いの就活へのスタンスや取り組み方の違いに嫌悪感を抱き、人間関係に歪みが生じ始める。やがて「内定者」が現れたとき、そこで見えてきたのは、これまで隠されてきた裏の顔だった――。
(C)2016映画「何者」製作委員会
(C)2012 朝井リョウ/新潮社