3位 『イノセント』
見どころ
貴族の恋愛劇であるが、二枚目で財力があって妻もいながら、絶世の美女と不倫を繰り返す夫。
それを見かねた妻は、若い男性と不倫をして、その男性の子供を産んでしまう。
そして、夫は復讐として子供殺しをする。
イタリアの名優ジャンカルロ・ジャンニーニが二枚目の貴族を演じるが、その男っぷりも見事。
そして、どこまでも男尊女卑で、心の底から女性を愛することをできず、自分しか愛せない悲しい男性なのです。
その妻を、前述の『青い体験』で妖艶な肢体を魅せたラウラ・アントネッリ。
しかしこの作品の彼女は、更に輝き妖艶で、しかも貞淑な妻から復讐のために不倫に走る情熱の女性を見事に演じています。
ヴィスコンティ監督の演出にかかると、ラウラ・アントネッリの美しい肉体や表情も一段と輝くのか・・・
彼女より美人の夫の愛人(ジェニファー・オニールも本当に美しい)を凌駕する"女の性"を魅せつけてくれます。
セクシーな男女の絢爛豪華な愛の営みと共に、愛の形と夫婦の形の不条理を描いた傑作です。
是非、詳しくは『イノセント』 ヴィスコンティ最後のエロティシズムをお読み頂けると嬉しいです。
データ
L'INNOCENTE イタリア Color 124分 初公開日: 1979/03/31
監督■ルキノ・ヴィスコンティ
原作■ガブリエレ・ダヌンツィオ
脚本■スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影■パスクァリーノ・デ・サンティス
音楽■フランコ・マンニーノ
出演■ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール
解説
ダヌンツィオの原作を仰ぎ、ヴィスコンティが幼少期に映画的洗礼を授かった、イタリア・サイレント期のロマン主義的傾向の恋愛劇へのオマージュとしての、典雅にして不気味な貴族の愛憎物語。未亡人の愛人(美しすぎて怖いJ・オニール)にうつつを抜かし、盲目的な愛国主義に溺れる、嫉妬深い男(ジャンニーニのキャリアの頂点!)。
失われゆく19世紀の栄華、そして新しい世紀への不安は彼を、その不実に悩み苦しみ抜いたL・アントネッリが密通し出来た赤児を殺す--という狂気へ駆り立てる。ラスト近い、その場面の恐ろしさ、純粋さ(開けた窓から雪が舞い込み、その冷気によって窓際に寝かせた幼子を殺そうというのである)……。巨匠入魂の、そして残念ながら最後の、自らの階級への痛切なる挽歌。
<allcinema>