1位 『ラスト、コーション』
見どころ
中国の巨匠の一人、アン・リー監督作品の中でも最も好きな作品。
日中戦争(第二次世界大戦)前夜の日本占領下の上海と香港を舞台に、思いを寄せる男性のために図らずも抗日運動に身を投じた中国人女性のヒロインが、日本軍と手を組み祖国を裏切る中国人男性を暗殺するために、色仕掛けで接近していく。
ヒロインは、好きな人がいるにも関わらず、処女を捨て、敵の男性に身体を委ねる。
ヒロインを演じるタン・ウェイの肢体の美しさと初々しさが光ると共に、それを抱く男性のトニー・レオンの紳士的でありながら自国を裏切りながらも生き抜いていく野心家の強い男性を演じています。
だからこそ、色仕掛けて暗殺しなくては行けない相手に対して愛情を抱いてしまいます。
男女の間に友情は成立するのか?という命題と共に、身体を重ね合い愛し合った男女は相手を裏切ることが出来るのか?というテーマを、説得力あるものにするのは、二人のセックスシーンの美しさ・激しさにあると言える。
ヒロインは濃厚なセックスの末、大義よりも愛に生きる・・・それが国よりも個を選ぶ。
この作品は、多くの女性映画ファンにも高い評価を得ているのも、彼女の心情に共感することが大きいからだと思う。
男女の関係の中では、セックスの比重がとても重い、そう感じさせてくれる作品で、傑作中の傑作。
データ
LUST, CAUTION(色・戒) 中国 / アメリカ Color 158分 初公開日: 2008/02/02
監督■アン・リー
原作■チャン・アイリン 『ラスト、コーション 色・戒』(『アイリーン・チャン短編集』所収)
脚本■ワン・フイリン/ジェームズ・シェイマス
撮影■ロドリゴ・プリエト
音楽■アレクサンドル・デスプラ
出演■トニー・レオン(イー)/タン・ウェイ(ワン・チアチー)
映画賞■
ヴェネチア国際映画祭 2007年 金獅子賞 アン・リー/金オゼッラ賞(撮影) ロドリゴ・プリエト
解説
「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー監督が、一人の女スパイの愛の葛藤を描く官能サスペンス。日本軍占領下の上海と香港を舞台に、想いを寄せる人のため図らずも抗日運動に身を投じたヒロインが、日本軍と手を組む祖国の裏切り者の男を暗殺すべく、色仕掛けで接近していく中で展開していく男と女のギリギリの心理戦がスリリングに綴られていく。過激な性愛描写が大きな物議を醸したものの、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞はじめ多くの映画賞を獲得するなど各方面から高い評価を受けた。主演は「インファナル・アフェア」のトニー・レオンと大抜擢となった無名の新人タン・ウェイ。共演に人気歌手のワン・リーホン。
1942年、日本軍占領下の上海。ごく普通の女子大生チアチーは、抗日運動に心血を注ぐクァンに秘かな恋心を抱き、彼と行動を共にする中で次第に感化されていく。やがてチアチーは、日本の傀儡政府に協力する特務機関のリーダー、イーに近づき暗殺を遂行する危険な任務を与えられる。さっそく身分を偽りイー夫人に接近し、冷徹で異常なほど用心深いイーを誘惑する機会を窺うチアチーだったが…。
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