第3位 『プライベート・ライアン』 (1998) SAVING PRIVATE RYAN
戦闘シーンがリアルなことで当時話題になった作品。
それまで史実に基づいた『史上最大の作戦』や『遠すぎた橋』など、一方でスポーツのような戦争娯楽作(『ナバロンの要塞』や『大脱走』)もある中で、かつてのTVドラマ・シリーズ「コンバット」のような人間ドラマとしての戦争映画を当時のVFXを駆使して徹底的にリアルに描いた作品。
第二次世界大戦のターニングポイントとなったノルマンディー上陸作戦で行方不明になったライアン二等兵を救うために、一つの小隊(7名)が最前線へと駆り出されていく、そこには過酷な戦場が待っていた。
『シンドラーのリスト』のような戦争を背景に人間の尊厳を描いた作品とは違い、戦争の中の戦闘、個々の戦い・殺戮を真正面から描いている。
常に戦場では死と隣り合わせであること、逆に生き残ることの重みを感じさせる作品。
殺伐な戦闘シーンの多い作品(映画館では気分の悪くなる女性もいたとか)の中でも、スピルバーグ監督らしいヒューマンなドラマも展開される。
監督■スティーヴン・スピルバーグ
脚本■ロバート・ロダット/フランク・ダラボン(ノンクレジット)
撮影■ヤヌス・カミンスキー
特撮■ILM
音楽■ジョン・ウィリアムズ
出演■トム・ハンクス/トム・サイズモア/マット・デイモン
上映時間■170分
製作国■アメリカ
番外 『バンド・オブ・ブラザース』 (2001) BAND OF BROTHERS
スピルバーグ監督とトム・ハンクスが『プライベート・ライアン』の続いて製作した作品。
何故番外?スピルバーグは監督はしておらず、トム・ハンクスと共に製作総指揮、そして『プライベート・ライアン』の何倍もの製作費を使って作られたTVシリーズであること。
第二次世界大戦の空挺部隊の隊員のノンフィクションをベースにドラマ化。
ヨーロッパを転戦する米陸軍101空挺師団・第506パラシュート歩兵連隊E中隊、彼らは第二次世界大戦の途中からアメリカ本土で訓練をして初陣がノルマンディー上陸作戦だった。
そして、ヨーロッパ戦線を転戦していき、終戦を迎えるまでの活躍を描く。
戦闘シーンは『プライベート・ライアン』同様、いやそれ以上にリアル、そしてかつてのTVシリーズ「コンバット」を濃密にしたような内容、個人的には『プライベート・ライアン』以上に好きな作品。
前半の戦闘シーンのリアリティと共に、後半のユダヤ人収容所のシーンが印象的。
終戦を迎えるところもまた、戦争とは何か?考えさせられる。
当時、無名な俳優たちを揃えリアリズムに重点を置いた、そしてなんと言ってもマイケル・ケイメンの印象的なスコアが耳に残る。
製作総指揮■スティーヴン・スピルバーグ/トム・ハンクス
原作■スティーヴン・E・アンブローズ
撮影■レミ・アデファラシン/ジョエル・ランサム
音楽■マイケル・ケイメン
出演■ダミアン・ルイス/ロン・リヴィングストン/ドニー・ウォールバーグ
第2位 『A.I.』 (2001) ARTIFICIAL INTELLIGENCE:AI
トップ2は、おそらく人気はそれほど無く、興行収入的にも下位の作品かもしれないが、個人的にはとっても好きな作品。
近未来(と言ってもかなり先の未来だと思うけど)に人々の周りには普通に人型ロボットがあふれていた。
ただ、ロボットたちには感情が欠けていたが、ある日、不治の病を患った少年の代わりのロボットに実験的に“愛”と言う感情をブログラムする試みがされた。
少年は両親の愛情を受けて幸せな生活を送るが、自分のアイデンティティに疑問を感じ始める。
そして永遠の命を持つ少年は次第に未来に不安を抱くようになる・・・
元々、スタンリー・キューブリック監督が長年温めてきた企画をスピルバーグ監督が映画化した、と言うことで話題になった作品。
『2001年宇宙の旅』の監督と『未知との遭遇』の監督とのコラボ、話題になると同時に、正反対な作風の二人の作品に対して、不安を抱くファンも多かった。
個人的には、大成功だったと思うが、キューブリック監督のファンからは「あまりにもヒューマン的」と非難され、スピルバーグ監督のファンからは「話が暗くて長い」と不評を買った。
ストーリーはSF版「ピノキオ」です、人間になりたいロボットのロード・ムービーで“人間にとって一番大切なもの”は何かを探して回ります、それが見つかった時の感動は涙なくして見れませんでした。
でもしっかりSFとしてディックやアシモフの定石は取り入れています。
また、詳しくは後日改めて・・・主演の男の子を演じたハーレイ・ジョエル・オスメント君の演技が素晴らしい!
監督■スティーヴン・スピルバーグ
原案■スタンリー・キューブリック
撮影■ヤヌス・カミンスキー
音楽■ジョン・ウィリアムズ
出演■ハーレイ・ジョエル・オスメント/フランシス・オコナー/ジュード・ロウ
上映時間■146分
製作国■アメリカ
第1位 『リンカーン』 (2012) LINCOLN
スピルバーグ監督作品で最も好きな作品はやはりこの作品でした。
「アメリカ史上最も愛された大統領」エイブラハム・リンカーンの偉大な足跡を映画化した作品、とは言っても「人民の人民による人民のための政治」と言うセリフは出てこないけど。
南北戦争末期、北軍有利の戦争が終結する前に、奴隷制度の撤廃を定めた合衆国憲法修正第13条の成立を目指すリンカーンの努力と苦悩を描く。
作品は地味と言われ、また国会に口出し出来ない三権分立の行政府の長としての大統領の立場が理解されず・・・日本で評価されたのはアカデミー賞男優賞をとったダニエル・デイ=ルイスの演技のみ、と言った感じ。
私には、民主主義の根幹を見ることができ、リーダーの苦悩を描いたこの作品に「リーダーシップとは?」を見ることができた。
詳しくは、映画『リンカーン』 リーダーの孤独と資質を描いたスピルバーグの最高傑作!をどうぞ。
監督■スティーヴン・スピルバーグ
原作■ドリス・カーンズ・グッドウィン 『リンカーン』(中央公論新社刊)
脚本■トニー・クシュナー
撮影■ヤヌス・カミンスキー
衣装デザイン■ジョアンナ・ジョンストン
音楽■ジョン・ウィリアムズ
出演■ダニエル・デイ=ルイス/サリー・フィールド/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/トミー・リー・ジョーンズ
上映時間■150分
製作国■アメリカ