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映画『ゴッドファーザー』 マフィアを描いた伝説の名作にしてアメリカ映画の最高峰

映画『ゴッドファーザー』 THE GODFATHER

ゴッドファーザー 三部作

映画『ゴッドファーザー』(1972年)

ゴッドファーザー

コッポラ監督の生涯の傑作であり、映画史上に残る作品、この後、PARTⅡ、PARTⅢとシリーズ化される。
ここで、コッポラ監督の作品に対するテーマは二つ有ると思われる。
一つは、アメリカ資本主義に対する批判、二つ目はイタリア系アメリカ人に対する差別。
マフィアと警察、政治家、芸能人との関わりを、アメリカ資本主義の一つの側面と捉え、権力・金のためには手段を選ばず、プライドも無い人々が描かれる。
またアメリカの差別社会、アメリカ社会の頂点に立つイングランド系アメリカ人、その下にアイルランド系やイタリア系、そしてユダヤ系、はるか下の方にアジア系、そして黒人がいる。
白人社会においては、イタリア系は下の存在に見られる。
アメリカ資本主義に勝ち残るためには、暴力で力を得ることが必要な事を描いている。
イタリア系アメリカ人の団結心や故郷シチリアでの家族の絆を描くことによって、一般的アメリカ人に支配されるアメリカ資本主義と比較している。
お祖父さんから孫まで、一緒に食事を取るシーンなどの大家族主義、絢爛豪華なパーティー・シーン、また衝撃的な殺人シーンなど、本来のテーマよりイタリア・マフィア一家の一大叙事詩的な部分が強まっている。
そう言った楽しみ方も十分に出来るが...

マフィア映画としての醍醐味は、その壮絶なシーンの重量感、またそれぞれのシーンの構成の素晴らしさは、見応えか十分。
冒頭の“ドン”の存在感の演出はもちろん、病院での緊張感溢れる画面構成。
ラスト近くの洗礼と暗殺シーンが交互にカットバックする見事な演出。

3時間近くに及ぶ大作でありながら、シーン一つ一つが印象的で、しかも冗長さも感じられない。
演出、編集の良さ、脚本の面白さ、どれも秀逸、ニーノ・ロータの音楽は映画史上に残る印象的なもの。

この後、SFXの発達により、殺人シーン等のリアリティーさで、この作品を上回る作品は有るものの、見せ方の巧さで、この作品を上回る作品は無い。
続編の『ゴッドファーザーPARTⅡ』も、この作品に負けず素晴らしい出来の作品。
このシリーズは『ゴッドファーザーPARTⅢ』で完結する。

Reviewed in 03.1999

映画『ゴッドファーザーPARTⅡ』(1974年)

なんと前作『ゴッドファーザー』に続いて、アカデミー賞作品賞を授賞するという快挙を成し遂げた作品。
大きなテーマは、前作と同様にアメリカ資本主義の中のイタリア系アメリカ人を描くこと。

ビトー・コルレオーネのイタリアでの幼少の頃から、アメリカに渡り“ドン”に成り上がるまでの話と、父親からその地位を受け継いだマイケル・コールレオーネの苦悩を同時に描く。

映画的な楽しみは、第一作を遙かに凌ぐ演出の上手さ。
2つの時代の出来事を上手く、交互に見せてくる、しかもそれが二人の主人公、若きビトーとマイケルの成長という点で一致している。
脚本・編集の巧さは、この作品の醍醐味と言える。
これによって、話に躍動感が生まれて、より一大叙事詩的な面白みが出ている。
物語が面白く描かれれば描かれる程、本来のテーマから離れ、壮大な人間ドラマになってしまっている点は否めないが、それでも十分(以上)に楽しめる作品。

前作同様に俳優陣の充実ぶりは素晴らしい。
アル・パチーノ、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン・・・数え切れない程のスターが出演(と言うか、この作品以後に超一流になっている)している。
しかも全員が素晴らしい演技を披露。
個々のキャラクターが、その存在感をきっちりと出している。
極めつけは、若き日のビトー・コルレオーネを演じたロバート・デニーロの圧倒的な存在感。
また1977年に『ゴッドファーザー・サガ』や、1981年の『ゴッドファーザー 1901-1959/特別完全版』で、PARTⅠとPARTⅡを時代順に並べ替え、監督自らが、再編集したものが出ている。
こちらの作品も、一つの作品として非常に楽しめる。
話自体の構成が変わってくるので、違う作品として見ることも出来る。
機会が有れば、こちらも是非観て欲しい逸品。

Reviewed in 03.1999

映画『ゴッドファーザーPARTⅢ』(1990年)

ゴッドファーザーPARTⅢ

1974年に公開された『ゴッドファーザーPARTⅡ』から実に16年ぶりに作られた、シリーズ完結編。
遂にと言う感が強かった作品。

決してストーリーとしてもつまらない作品ではない。
マフィア映画の王道を行く作品として現代化され、銃撃シーンもリアリティーも有り迫力も増している。
ヘリコプターからの銃撃シーンは圧巻。
また新しく入った俳優陣、アンディ・ガルシアも、第一作のジェームズ・カーンのやった役の血の気の多い、コルレオーネ家の長男の息子役を好演している。

ただ残念なのが、時代は’90年代に入り、当初、このシリーズが持っていた、イタリア系アメリカ人と言う位置付けが薄らいでいること。
この作品でも語られているが、この頃になるとイタリア系もビジネス界で認知され、既に社会の一部に組み込まれた存在になっている事。
従って差別される位置づけではないことや、結局、このシリーズを上手く終結させるためのストーリーになってしまっている事。

コッポラの演出・編集等には、いささかの衰えは感じないものの、時代の移り変わりが、テーマの存在感を奪い取ってしまったのが、この作品には不幸だったと言える。

また美男子のアンディ・ガルシアとの連相手は、当初、ヴィノナ・ライダーが出る予定だったが体調を崩して出れず、コッポラの娘が出演。
残念ながら、その容姿と演技力には疑問点が付いた。
ヴィノナ・ライダーのような華のある女優が出ることによって、また違った演出も有ったかもしれないが...。

『ゴッドファーザー』、『ゴッドファーザーPARTⅡ』の続編という宿命と、時代の移り変わりと言うものに翻弄された作品では有るが、十分に作品としては楽しめる一本になっている。

Reviewed in 03.1999

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